smashing! ゆめおちて てをとって

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smashing! ゆめおちて てをとって

…金縛りですね…目は見えるんですが、身体は動かないし声も出ない。生来霊感体質で今まで何千回と金縛られてきた僕は、いちいち動じません。その都度解くのも面倒なのでそのままにしときますけど。だけどこのペントハウスに引っ越して来て、更に伊達さんとお付き合いするようになってからは、金縛りの頻度も激減していたんですが…ところで…ここは。 僕のペントハウスでは、ない。これはどう見ても…伊達さんの家、ですね?見上げれば網代天井。このあいだ屋根の修理の時にほぼ全室に手を入れたのでしたね。それはそうと、なぜ僕はここに?しかも立ってる感じ?あ、位置的に姿見ですか、成る程。これ盗撮ぽい。 スラッ…ペタペタ… …どなたか入ってこられたようです。ロンTにハーフパンツ姿。あ伊達さんだぁ僕はここですよ伊達さーん……目の前を横切ってしまわれました。そのうちお茶の入ったコップを手に戻ってきた伊達さんはちゃぶ台にそれを置き、お座布団を枕にごろん、と仰向けに。いけません何かお腹に掛けて頂かなくては。そのうち、伊達さんの身体にちょっとした異変が。 伊達さんの寝息が規則正しく響き始めた中、それは顕現してしまいました。え?寝てますよね?だってスースー言ってますよね?なのに…なんということでしょう、僕の、僕の主君である伊達さんの。 トウケンダンシ ショクダイキリミツタダ ガ 勃 主君よ……溜まっ…いえ、ちゃんと毎日のように♡♡♡だし、僕がいないときは当然設楽くんに♡♡♡されてる筈だというのに。きっとお、お疲れなんでしょう。いけない。こんな姿を誰かに見られでもしたら。意思の疎通のできない輩にこの方がそんな…ちょっと興奮…ではなく。 伊達さんは何事もなかったかのように眠っている。伊達さんのトウケンダンシは極んだまま。はた、と僕は閃きました。生来の霊感体質でこれまで金縛りに遭った回数は何百回(千…でしたっけ?)。そのうち僕は自らの意思でその「金縛り」が解けるようになっていたはず。そうか、解けばいいんですよこれを。肘を左脇の下から離さぬ心構えでやや内角を狙い、えぐりこむように、打つべし。はい丹下先生。いつものようにお腹の底から気合いを入れる感じで。 …フンスッ! ぱん、と音の無い音が響くような感じ。気付けば手も足もちゃんと感覚が戻っています。大丈夫、首も動…え? 思わず二度見したその先の姿見。いままで「僕」であったものに映っているのは、見まごうはずもないヒヨコちゃんメッシュ。今ここに居るはずのない、僕らの愛する設楽泰司くんの姿が。 この神の采配はどう受け取れば…こんなありえない状況は十中八九、夢。そして夢落ちで終わる物語です恐らく。いま設楽くんの中に存在するこの僕。目の前には極んだトウケンダンシを持つ伊達さん。 フリーダムに考えて、あえて僕がこの、設楽くんのトウケンダンシを「使用しても可」と言うことになり得るのではないのか。 成る程。承りました。 「伊達さん、起きて。起きては頂けませんか?」 「…んぁ…あれ?なに設楽おかえり……ハルちゃん…かと思ったん」 「流石僕の主君…中身にお気づきであらせられるとは」 「…設楽?なんのなかみが?え?なに?」 そうと決まればさっさと事を済ませましょう。ささ。伊達さんの両脚からハーフパンツをパンツごとスポーンと取り去り放り投げ、唖然とする彼を力任せに押し倒す。んなんでええええええ!伊達さんの悲鳴が響き渡る。ちょ待って待ってま…。 「えなになんなのお前?いつもと違うじゃんトータルでぇ!」 「…こんなあなたも見てみたいと思っていました。では遠慮無く」 「ちょっと待って!ひょっとしてお前…」 「大丈夫。これは夢なんですから」 「……まさか、ハルちゃ…」 「…ンフ」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「…ん…さん、雲母さん」 「…は…ぃ…」 「楽しい夢?寝ながら笑ってましたよ?」 …あー、そうね夢よね僕、夢って言ってましたよね。見慣れたバロック風の天井、いつものモルテーニのソファーの上。目の前にはちょっと心配そうな設楽くん。あ、今週は僕のペントハウスで過ごすことにしたんでした。ああそれにしても。 「なにか冷たいものでも」 「ありがとうございます…あの、伊達さんは?」 「今日はもう暫くかかるって、メールが」 僕のためにキッチンへと向かった設楽くん。ああ、それにしても。あの夢。残念ながら所々記憶が朧気ではありますが、僕の主君があんなにも素晴らしいだなんて。僕は生粋のネコちゃんなので、他の男性、しかも伊達さんを抱いたことは一度もない(裏設定バージョンの件はこの際目を瞑って頂いて)これが「左側」の感覚、ですか。ずっと「右側」だった僕にとってはファラデーの電磁誘導の法則ですよ?(青天の霹靂的な) この先知ることはないと思っていた目眩く感覚。勿論深追いしようなどとは夢にも思いませんが、設楽くんの気持ちを、伊達さんに対する探究心を、垣間見ることが出来たように思います。わかりみ。 「なんか呑みたくなって。雲母さんも、良かったら」 設楽くんが運んできてくれたのはビールの入ったグラス。柔らかめのビーフジャーキー、僕の大好きなメーカーの。そしてたっぷりのザワークラウト。設楽くんの大好物。 僕はますます、設楽くんに興味と愛情を持たずにはいられない。 何故なら。愛を受け愛を与えるあの人を、手に入れることの出来た、この世でたった二人の同志なのですから。 (暫定…?ンフ、それは内緒ということで♡)
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