73人が本棚に入れています
本棚に追加
1
女の子が女の子に恋しちゃいけないなんて、誰が決めたんだろう?
その頃は、毎日そんなことばっかり考えていた。
その頃。私が中学生になった、頃。
「ミチ? 何してるの? 帰ろうよ」
「あ、うん、帰ろう、帰ろう」
中学校に入学して、同級生になった佐取美晴に声をかけられて、私は思考を中断した。
思考を中断されたことに、別に腹は立たない。
だって、それよりも、美晴と帰る方が、大事だから。
この気持ちに気付いたのは、いつだったかな?
多分、夏休み前に、美晴が上級生にラブレターを貰った、あの時。
困ったような、恥ずかしいような、複雑な顔で、ラブレターを読んでいた、あの顔を見た時に、私は自分の心の奥底に芽生えた、嫉妬の炎を感じた。
それは、仲の良い友人に対する独占欲なのだ、と最初は思ったけど。
「どうしよう、ミチ。こんな手紙、どうしたらいいの?」
携帯電話がようやく普及し始めた頃で、中学生の連絡手段は、まだ家電か手紙、という時代。
「興味ないなら放っておけば? どうせ付き合ったりしないんでしょ?」
「それはそうなんだけど……でも、無視するのも悪いし……」
「付き合う気もないのに、変な気を回せば誤解されるよ。相手もどうせ当たって砕けろって気持ちだよ。高嶺の花のお嬢様だもん」
最初のコメントを投稿しよう!