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 女の子が女の子に恋しちゃいけないなんて、誰が決めたんだろう?   その頃は、毎日そんなことばっかり考えていた。  その頃。私が中学生になった、頃。 「ミチ? 何してるの? 帰ろうよ」 「あ、うん、帰ろう、帰ろう」  中学校に入学して、同級生になった佐取(サトリ)美晴(ミハル)に声をかけられて、私は思考を中断した。  思考を中断されたことに、別に腹は立たない。  だって、それよりも、美晴と帰る方が、大事だから。  この気持ちに気付いたのは、いつだったかな?  多分、夏休み前に、美晴が上級生にラブレターを貰った、あの時。  困ったような、恥ずかしいような、複雑な顔で、ラブレターを読んでいた、あの顔を見た時に、私は自分の心の奥底に芽生えた、嫉妬の炎を感じた。  それは、仲の良い友人に対する独占欲なのだ、と最初は思ったけど。 「どうしよう、ミチ。こんな手紙、どうしたらいいの?」  携帯電話がようやく普及し始めた頃で、中学生の連絡手段は、まだ家電か手紙、という時代。 「興味ないなら放っておけば? どうせ付き合ったりしないんでしょ?」 「それはそうなんだけど……でも、無視するのも悪いし……」 「付き合う気もないのに、変な気を回せば誤解されるよ。相手もどうせ当たって砕けろって気持ちだよ。高嶺の花のお嬢様だもん」
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