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 美晴は、市内でも、有数の名家である佐取家のお嬢様だ。と言っても、跡を継いでいるのは、美晴のおじさんなんだけど。  美晴のお父さんとお母さんは、もう大分前に亡くなったらしい。  なので、美晴のお祖母さんに引き取られて、佐取の本家で暮らしている。  中学三年生が、一年生にラブレターを寄越すなんて、なんてマセたことを、と思うけど。それも男子が。  でも、美晴には、そうさせてしまう魅力があった。  顔形はそれなりに整っているけど、すごい美少女かと言うと、そうでもない。  でも、そこに、美晴の声や、仕草や、立ち居振舞いが加わると。  たおやか、と言うのは、こういうことを言うんだろうか?   指先が動くだけで、まるで雅楽の調べが聞こえて来そうな、まるで舞を見ているような、不思議なオーラが漂う。  佐取家は、山の方にある由緒正しい神社の宮司の家系で、その家の子供は、お祭りの日には神社の隣に設置された舞台で舞を舞っていた。  お神楽舞、神社では『浦安の舞』って呼んでた。今は血筋に関係なく、神社周辺の地区に住む小学生の女の子は 希望して練習すればこの舞に参加することができる。
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