この背中の、ひとかけらの光を振りかざすから

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 この世界に君臨する、魔王フィア。一見可愛らしい名前だが、その意味は――――恐怖。  その名の通りフィアの存在は、世界を恐怖に貶めていた。  人々の命を軽々しく奪い去り、あまりの過酷さに死者まで出た労働の末造られた建物や防壁などがことごとく打ち壊され、幼い子供や女性であろうと遠慮せずに手を下す。  人類の進歩をはばむ害虫程度にしか見られていなかった魔王。  けれど人知れず力をつけた彼は、今では人間では到底かなわない力をつけ、人類の宿敵と称されるようになっていた。  送り込まれた勇者も一人残らず生きて帰っては来ない。出向いた騎士団はほぼ全滅、生き残った者は戦意喪失して王城へ駆け戻ってくる。 「……だけど、それも今日で終わりだ」  刀の柄を握り締め、勇者――――ブレードは目の前にそびえたつ魔王城を睨みつけた。  威圧感に満ち溢れたこの城は、長い旅の最終地点、目標地点だ。ここに魔王が、その側近の魔物が住んでいる。今まで数々の人間を、その強大な力の前に消し去ってきた場所。  けれど、自分なら。
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