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拝啓
波澤高等学校駅伝チームの皆様へ
ご挨拶を申し上げます。
「今年こそは」
と翔真は思った。心地いいリズムを刻む足音と共に見慣れた景色が後ずさりしてゆく。少し呼吸を整えようとして、ふとぼんやりとそう思った。
高校三年間、日数で言えば僅か千日強。一生のうちで最も輝いている時、いわゆる映画のクライマックスと言っても過言ではないだろう。そして同時に人々は、そうでなければならないという義務感をまで背負うこともある。
俗に言う、この「青春」とやらは俺とは縁がないらしく、また俺もこの「青春」という概念ははなっから嫌っていた。
学校における集団生活。苦痛とまでは言わないが、敢えて好んで繰り返そうとは思えない毎日を俺は淡々とこなしている。朝ご飯を食べて学校に行く、勉強をして掃除をする。予め決められている作業をミスなく、今日という一日を終わらせるために行なっている。
友達が欲しい、そんな考えすら頭を過ぎったことは一度もない。自分の世界に無断で侵入されるのは何だか気分を害すし、他人の思いや感情、ましてや顔色などに思いを巡らすなんてことは面倒極まりないからである。
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