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「…小毬先輩、出るのが遅くなってごめんなさい。どうかされたんですか?」
小毬先輩はもちろん寮を使っていない。生徒会長も虎太郎君も実家から直接通っているはずだ。そんな寮に関わることがない人がここになんでいるのだろう。口には出していないもの、顔に出ていたのだろう。小毬先輩が苦笑しながら持っていた紙袋を私にそのまま渡した。
「これ、渡しに来たの」
紙袋を覗くと、先ほどのお茶会でいただいたクッキーやスコーンなどの焼き菓子が入っている。美味しそうな匂いにお腹が小さくなった。
「これ渡すためにここまで来てくださったんですか…?」
小毬先輩だって忙しいはずなのに。なんだか申し訳ない気持ちになる。
「そんな、申し訳ないっていう顔しないで?富ちゃんにたくさん食べてもらいたくて張り切って作っちゃったから逆にね、貰ってくれると嬉しいの。あと、夕食はちゃんと食べたかしら?」
私は首を横に振る。お茶会でいろんなものを食べさせてもらったし、元々勉強に夢中になるとご飯を食べることを忘れてしまうときがある。だから寮の夕食の時間が終わってしまって諦めるときも結構あるのだ。もうそんな状況に慣れて知ったから大丈夫…そう思う私に大きく目を見開いた先輩が鮮やかなピンク色の布に包まれたものを渡してきた。
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