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「さっきは廊下で話せるような内容じゃなかったから、つい……」
「部屋に連れ込んだ?」
「いやっ、だから……それはちょっと言い方に語弊があるというか、紛らわしいというか……」
なんだろうこれ。まるで私が悪いことした立場になって必死に弁解をしているみたいなんですけど。
でも、そうじゃなくってさっきの話は。
「…あんまり人には聞かれたくなかったから」
自分に自信も勇気もなくて、今の状況に不安を覚えている私は少し気まずくなって目線を下げる。
「どうしてですか?」
「だからそれは…」
言いたくなかった。絶対に。
けれど、酔った勢いで全部ぶちまけてしまっていることを思い出し。今さら彼に隠す必要なんてあるのだろうか?
そう思った私は、はあ、とため息一つついてから「前に聞いたかもしれないけど」と前置きをしながら、
「私全然芽が出ない漫画家なの。しかも少女漫画家。それなのに恋愛経験ゼロで女の子の気持ちなんて誰よりも分かってないし」
全部言ってしまえばいいと開き直った。
「周りはみんな結婚して幸せそうな家庭を持っているのに、私はどうしてもこの仕事を諦められなくて、いまだに独身だし。もう二十七歳なのに親には心配ばかりかけてるし。いい歳して恥ずかしいでしょ?」
顔をあげて、クスッと笑いながら自分を守るための自虐ネタをもらした。
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