02.「俺と取り引きしませんか?」

11/20
前へ
/164ページ
次へ
かと言って強引そうでもないし、見た目からは「僕」の方が似合いそうなのに、一人称は「俺」で意外だったりするし。 ふつうに生活していたら、こんなかっこいい人と関わることだってない。 あのとき私が酔っ払って、無闇に絡んだに違いない。 きっと、城戸くんだって迷惑してるはず。 「こんなに口がうまい人は初めてだな〜」 笑いながら彼の腕をパシパシ叩いていると「高野さん」声が聞こえて、私の手を掴む。 どきっ、として一瞬固まった私をよそに。 「──俺、嘘は言わない主義なんで」 聞こえた声に、恐る恐る顔をあげる。 張り詰めるような空気と、真剣な眼差しが、真っ直ぐ私を見下ろしていた。 また、どきっと胸を弾ませながら「なに、言って…」緊張を誤魔化すように、手を引き抜こうとバタつかせながら目を逸らすけれど、全然ビクともしなくて。 「冗談なんかじゃないですよ。ほんとに俺、思ったことしか口にしないんで」 私の手を掴む手に、ぎゅっと力が加わる。 「私に、そんなこと言われても……」 胸の奥で動いた鼓動は少しずつ速い音を刻む。 緊張のせいなのか、かっこいいからなのか、はたまた手を掴まれているからなのか。 恋愛経験ゼロな私は、原因不明の病に陥っているようで。
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加