02.「俺と取り引きしませんか?」

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「これ以上、何か言われたら私、どきどきしちゃうから……」 城戸くんにとって“可愛い”とか“尊敬してる”とか言われ慣れた言葉かもしれないけれど、私にとってそれは違う。 すごく最上級の褒め言葉のようなものだから。 「ほんとに慣れてないの。そんなふうに言われること」 ずっと自分のことをダメなやつだと思って過ごしてきた。 それなのに彼は、なんの躊躇いもなく私を動揺させるから。 ふいに、両手を掴まれてどきっと緊張していると「じゃあ」口元が解放された彼の口から言葉が落ちてくる。 「俺と取り引きしませんか?」 人懐っこい笑顔を浮かべながら、とんでもないことを提案するから、え、と困惑する。 「高野さんは、恋愛経験がなくて恋がどういうものなのかもいまいち分からない。だから、漫画もいいものが描けない、ですよね?」 それを言葉にされると恥ずかしくて、 「いやっ、まあ、そう…だけど……」 言葉を細めると、だったら、とニイッと顔を緩めた彼は。 「俺が恋愛を教える──、ってのは、どうですか?」 告げられた言葉に困惑して「……えっ?」と思考回路が停止する。 「そしたら恋愛のどきどきも体験できて、いい漫画が描けるかもしれないじゃないですか」 ……いや、確かにそうかもしれないけれど。 「でも、なんで?」
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