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なんでそんなことを。
だって、
「城戸くんにメリットなんか一つもないよね?」
むしろ、デメリットの方が多いような気がするのに。
「そんなことないですよ」と笑ったあと、
「高野さんと一緒に過ごしてみたらもしかしたら俺もやりたいことが見つかるような、そんな気がするんですよね」
「……やりたいこと?」
「はい。だから、俺にとってもメリットしかないですよ」
城戸くんと話していると、自分の根っこの部分にある暗い感情が溶けてなくなるような、そんな感じがする。
けれど、臆病な私は、
「でも、恋愛を経験したからっていい漫画が描けるとは……」
思えなくて。
断った方がいいのかもしれない、そう思っていると「だったら」と人差し指を立てた。
「期間限定ってのはどうですか?」
「期間、限定……?」
少し食い下がる彼が、はい、と頷いて、
「一ヶ月だけ秘密の関係ってことで恋人同士として恋愛してみませんか? それなら高野さんも少しは気楽に考えられるんじゃないですか」
一ヶ月だけの期間限定。確かに、それなら少しは気楽にできるのかも……?
いや、でも……。
「うーん」考え込んでいると、
「お互いウィンウィンでいいことずくしだと思うんですよね!」
ズイッと顔を近づけて熱弁してくるから、あまりの距離の近さにテンパって「ぅわっ!」と玄関の段差に足首がぶつかって尻餅をついた。
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