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「大丈夫ですか?」
かがんで目の前に現れる城戸くんは、心配しているというより笑いを堪えているように見えて。
「そんなに心配してないでしょ」
「してますよ! だっていきなり尻餅ついちゃうから、そりゃあもう心配で心配で」
身振り手振りで無駄にアピールをして見せるけれど、それでもやっぱり口元の端っこが広角を上げているように思えて。
「……もうっ。なんか、意地悪」
ムスッと拗ねて視線を逸らすと、だって、と言った彼は、
「高野さんが過剰反応しずきっていうか、反応がいちいちウブすぎて。なんか、可愛いなーって思っちゃって」
告げられた言葉に私は「なっ…!」と赤面してしまう。
「あ、ほらそれ」と指摘されるから、ますます恥ずかしくなる。
「ちょっともう! ほんとにやめて……っ!」
こんなことでいちいち照れる私は、見た目通り恋愛経験ゼロで。
城戸くんは、きっと今までにたくさんの女の子と付き合ったに違いない。
だって、慣れてるから。
「じゃあ、からかうのはやめるので取引成立ってことでいいですか?」
なんて支離滅裂なことを言うから。
「さっき言ってたことと違くない?」
冷静にツッコミを入れると、まあまあまあ、となぜかなだめられる。
「それで、どっちにしますか? 取引成立? 失敗?」
言葉をまくし立てられるから、あとがなくなった私。
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