02.「俺と取り引きしませんか?」

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どっちにするのが自分にとって得なのか損なのか。十秒にも満たない、ほんの短い時間で考えて出した答えは。 「………試してみたい、かも……」 そんな私の答えを見抜いていたかのように、そうなることを予測していたかのように、クスッと笑ったあと、 「取引成立ってことですね」 漫画のプラスになるなら、と甘い誘惑に負けてしまった。 そして、じゃあ、と続けると、 「今さらだけど自己紹介しておきましょうか」 「う、うん…」 「俺、城戸 充尊(きど みこと)です。今年、二十歳の大学生です」 キラキラスマイルで告げられる。 けれど、 「えっ……?」 今、なにか聞いてはいけないようなものが聞こえてしまったような。 「……だ、大学生、なの……?」 「はい。つい先日、二十歳になったばかりです」 ………Oh no 。 目が点になるとは、まさしくこのことだ。 まさか自分よりも七つも年下だったなんて。 「どうかしました?」 「いやっ、なんでもない!」 そうは言ったものの動揺は隠せなくて。 だって、私とそこまで変わらないかと思っていたから。いや、だからといって老けてるとかそういう意味ではないんだけれど。 次は、私の番だ。 えーっと、と言葉に詰まらせながら、 「ペンネームは高野樹穂なんですけど、本名は村井樹穂(むらい きほ)で。それから歳は……」
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