02.「俺と取り引きしませんか?」

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あー、言いたくない。 ほんとは言いたくない。 でも、 「……二七歳、です」 その言葉を口にすると、より一層ずしんと胸を重たくする。 現実だと思い知らされる。 「え、そうなんですか?」 驚いた城戸くんの声が落ちてきて、ああほんと情けない、そんなふうに思って下唇を軽く噛んでいると、 「全然二十七に見えないですね。むしろもっと若いのかと」 「いやぁ、ほんとにお恥ずかしい」 その歳で、いまだに独身を貫いて夢を追いかけてる私。 「もうそんな歳なんだって笑っちゃうよね」 あと三年もすれば三十路になる。 きっと、もっと、今よりも不安な未来を想像するだろう。 それなのに彼は「いえ、ほんとに」と言って首を横に振ったあと、 「二十七歳とは思えないです。だって村井さん、すごく可愛いから」 「えっ? か、かわ……?」 「はい、ほんとに」 この私が? いやいや、何言ってるの。 「そんなわけないじゃーん。もう、城戸くんってばお世辞が上手だなぁ」 表面上では笑って誤魔化して見せるけれど。 本心は。年上を簡単に喜ばしてしまうなんて、恋愛マスターかよっ。思わず心の中でツッコミを入れた。 「村井さん、俺お世辞なんて言いませんよ。さっきも言いましたけど俺、嘘はつかないんです」
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