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あー、言いたくない。
ほんとは言いたくない。
でも、
「……二七歳、です」
その言葉を口にすると、より一層ずしんと胸を重たくする。
現実だと思い知らされる。
「え、そうなんですか?」
驚いた城戸くんの声が落ちてきて、ああほんと情けない、そんなふうに思って下唇を軽く噛んでいると、
「全然二十七に見えないですね。むしろもっと若いのかと」
「いやぁ、ほんとにお恥ずかしい」
その歳で、いまだに独身を貫いて夢を追いかけてる私。
「もうそんな歳なんだって笑っちゃうよね」
あと三年もすれば三十路になる。
きっと、もっと、今よりも不安な未来を想像するだろう。
それなのに彼は「いえ、ほんとに」と言って首を横に振ったあと、
「二十七歳とは思えないです。だって村井さん、すごく可愛いから」
「えっ? か、かわ……?」
「はい、ほんとに」
この私が?
いやいや、何言ってるの。
「そんなわけないじゃーん。もう、城戸くんってばお世辞が上手だなぁ」
表面上では笑って誤魔化して見せるけれど。
本心は。年上を簡単に喜ばしてしまうなんて、恋愛マスターかよっ。思わず心の中でツッコミを入れた。
「村井さん、俺お世辞なんて言いませんよ。さっきも言いましたけど俺、嘘はつかないんです」
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