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03.「デート行きましょう」
*
お昼を少し過ぎたところ、いつもは鳴らないスマホがピコンッと短く音を立てる。
誰だろう、思いながら開きっぱなしになっている真っ白なノートの上にシャープペンシルを転がすと、スマホに手を伸ばす。
【今週末、愛花が帰って来るんだけど樹穂も帰って来れる? 久しぶりにみんなで集まりたいんだけど】
メッセージの相手は、お母さんからだった。
愛花(あいか)は私の妹で、七つ離れている。そして、城戸くんと同じで大学生。
私とは対照的に、明るくて可愛くていつもクラスの中心にいるような子で。愛想もいいし、何でも卒なくこなす。
そんな愛花とは、よく比べられた。
『愛花ちゃんは可愛くて愛想もいいのに、お姉ちゃんの方は結構おとなしくて冷たい感じなのね』って。
おとなしくて何が悪いの?子どもながらに何度も思ったことがある。
冷たいって、そんなに私と接したことない人が陰で言ってたらしいけど、実際私の何を知ってるのって感じだったし。
つまり、
「……帰りたくないなぁ」
お母さんや妹に、会いたくない。
どうせ、私の今の状況をバカにして、早く辞めて違う仕事でもすれば、なんて言われるんだろう。
そうに違いない。
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