02.「俺と取り引きしませんか?」

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お母さんは、結婚して家庭を持つことが幸せだと思っている。 それが世間一般では当然だと謳ってる。 まるで、そうなることが常識とでも言いたげなようで。 その範疇から逸脱する私が、むしろ“例外”とでも言いたいのかな。 でもさ、それって、ただのエゴだよね。 だって、 「私は、漫画を描くのが好きだから今の仕事に就いてるのに。幸せじゃない、みたいな言い方やめてよね……」 人それぞれ幸せの価値観は違うの。 恋人であれ、友達であれ、家族であれ。みんな違うから、それを無理やり枠の中に閉じ込めようとしないでほしい。 私は、今が十分幸せなの。 全然、泣かず飛ばずで崖っぷちだから苦しいことは日常茶飯事だけれど、漫画を描いているときだけはすごく幸せ。 楽しんで描いたものを、読んでくれる人がいるってだけで幸せなの。 ただ、それがなかなかうまくいかなくてコミックスに発展しないのだけれど…… 「あーあ。もうっ、なんか、最近全然うまくいかないなぁ」 自分の置かれてる環境に嫌気がさして、起き上がって髪を乱暴に撫でると、 ピンポーン、とインターホンが鳴る。
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