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01.「これは、悪い夢……?」
*
「ん〜……頭、痛い……」
カーテンの隙間から漏れる日差しで目が覚めた私は、ガンガンと殴られたような頭の痛みを抑えながら、ベッドから起き上がる。
村井 樹穂(むらい きほ)。今年二十七歳。彼氏なしで、安定した仕事についてはいない。
たまにくる文庫本の表紙の絵を描いて何とか食いつないでいる私は、漫画家の端くれで。
読み切りを描いてはすぐに打ち切りになり、なかなかコミックスにもならない。
つまり、私は現在崖っぷちの漫画家です。
「いててててて……」
それよりも、どうしてこんなに頭痛いんだろう。
昨日何したっけ?
……そういえば昨日は、担当さんと今後についての話をしたんだったよね。それでそのときに、『次こそは頑張りましょう』って言われて……
崖っぷちの私には、すごくプレッシャーに感じたんだったよね。
それで、次の作品をいいものにしなきゃと焦った私は居酒屋に立ち寄ったんだったっけ。で、お酒を頼んだのは覚えていて。
そのあとのことが全然頭にないけど……
それに私、お酒くさいなっ。
一体どれだけ飲んだんだろう……。
ふわっ──
わずかに左手に感じた髪の毛。
え?そう思いながら視線を落とせば、布団からちょこんと覗く頭が見えた。
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