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序章
僕は他人が持っていない、でも持っていても特に得もなければ損もない、不思議な能力がある。
なぜ言い切れるのかというと、そんな話を聞いたことがないからだ。他人が嘘をついた瞬間にその人の心の内側の色が変わるのを見た、なんていう馬鹿げた話を。そしてこの能力を持っていることにより、僕にとって良いことも悪いことも今まで特になかったからだ。
他の人とは少し違う景色が見えるだけ。僕はそんな風にこの能力を解釈して楽しむことにしている。こんな悩みにもならないような悩みに悩めるほど、僕の器は大きくない。
何の変哲もなく、タネも仕掛けもない毎日。物語の主人公になんてなれやしない僕は今の生活に満足している。
しかし僕は知っていた。この能力によって平々凡々な毎日が一変するような、そんな出会いや出来事を求めている僕もいることを。
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