三章

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 早歩きをしていたのですぐにあのT字路に着いた。このまま自分の家とは逆方向に進めばいい。そう距離は離れていないはずだ。  勢いそのままにまるで僕の性格のように真っ直ぐに進もうとして、なんとなく彼女と二人で歩いてくる方を見た。するとなぜか僕の進んでいる方向の少し先にいるはずの彼女がいて、なぜか彼女はその道を歩いていた。二人で歩いてきた道を引き返していた。つまり、学校へと向かっている。  不思議に思いながらも結構距離が空いていて声をかけることもできずに、僕は彼女の後を追う形になった。  しばらく歩いて気がついた。距離が空いているのではなく、彼女はかなり速く歩いているのだと。そのせいで一向に追いつけない。  しかも不思議なことに彼女は学校を通り過ぎたのだ。  意味が分からなかった。何か学校に忘れ物でもしたのかと思っていたのに。不審に思った僕は、走れば追いつける距離にいたけどあえてそのままの距離感を保つことにした。  すると信じられないことに、彼女はある一軒の家の中へと入っていった。はてなマークが止まらなかった。彼女が入った家の表札を確認する。 『古蝶』  こんな珍しい苗字、他にいるわけもない。
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