三章

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 彼女は嘘をついていたというわけだ。どうしてそんな嘘をついたのか……と普通の人ならそう考えるのだろう。でも僕は違う。普通、ではないからだ。僕には能力があった。  確かにあの時彼女は家はこっちか、という質問に対してそうだよ、と答えた。色は白だった。でもそれは嘘だった。なぜだろうか。彼女は嘘をついていたのにそれを感知できなかったのか。偶然だろうか。  これは早急に確かめてみなくてはいけない。        × × ×  三日ほど経過した。今まで会話した彼女との内容をできるだけ思い出して、その真偽を調べ尽くした。  時にはクラスメイトに話しかけてさりげなく聞いてみたり、会話を盗み聞きしたり、彼女の後をこっそりつけてみたり。  色々やった結果、信じられないことが起きていた。僕が確かめられたことに限るのだけど、その全てが嘘だったのだ。  彼女の住所は間違いなくあの日彼女が入った一軒家だったし、姉もいなければ、両親が離婚しているということもなかった。彼女との共通点がどんどん崩れていく。  その他のことも何もかもが嘘だらけだった。だけど、彼女の心の内側は真っ白だ。それでやっと僕は自分の能力のことをきちんと理解できた。  僕の能力は他人の嘘とその回数を見るものではなかった。あの色は罪悪感の色だったのだ。僕はてっきり嘘をついた時に天啓の如くそれが可視化されているものだと思っていたけれど、実は本人がついた嘘に対して罪悪感を感じた時に色が変わるものだったらしい。そして色は、嘘の回数じゃなく罪悪感の積み重ねだったのだ。  誰も持っていない白という色をしていた彼女は、嘘に対する罪悪感の全くない、大嘘つきだったというわけだ。  僕の中で、古蝶という存在そのものの意味が変わった瞬間だった。
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