一章

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一章

 わいわい、がやがや  そんな擬音が浮かんでいるのが見えてきそうないつもの教室の風景。ホームルームが始まる前の今の時間は、今日も今日とて騒がしい。  各々が思い思いの相手やグループと集まり、話す。その数だけ浮かんでは消えを繰り返す様々な話題たち。そんな様子を廊下側の一番後ろの席で遠巻きに眺めていた僕の脳内には、シャボン玉のイメージが浮かんでいた。  さて……、と僕は一息置いてからあの不毛な日課を始めることにした。  僕は隣で話す女子二人の会話に耳を傾けた。 「昨日はめちゃくちゃ楽しかったよね」 「ほんとそれね」 「次予定が合えばまた行こうよ」  ふむ、どうやら二人はどこかに一緒に出かけていたらしい。僕はタイミングを伺いつつ、まるで興味がなさげな感じで肘をついて顎を手のひらで支えた。 「じゃあさ、今週の日曜は空いてる?」  ここだ、と僕は目線を彼女らに向ける。凝視ではなく、ちら見レベルで。特に質問された側の方に。この時、目に少しだけ力を入れる。それがトリガーなのだ。
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