一章

4/5
前へ
/16ページ
次へ
 与えられるのならこんな気味の悪いものではなくもっと実用的なものの方がよかった、と毎回思うものの具体的にどんなものがよかったかまでは思い至らない。まぁ要するに僕は他人にはないものを持ちたくないのだと思う。普通が一番。それが僕の願いだというのに。  とはいえせっかくの能力だ。暇つぶし程度には使える。ということで次のターゲットを探そうとしていた時、ふと今まで考えもしなかったことが頭に浮かんだ。  僕が今いる位置からクラスメイトたちの姿は少し首を左右するだけで見える。そこで思いついたのが全員の心の内側を見てみよう、というこれまたくだらない能力に見合ったくだらない思考だった。  とはいえ思いついてしまったからには仕方がない。ではいくか、と息を整えて目を凝らす。こんな大勢に対して同時に使うのは初めてだったけど、問題はないようだった。もはや僕の中で日常の一部と化した非日常的風景を、この両目は捉えていた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加