一章

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 僕の今の視界を簡潔に説明すると、十人十色。その言葉がぴったりはまりすぎてしまうくらいにまさしくそれだった。  まだ白っぽいなと思える人もいれば、完全にグレーな人もいる。違いはあれど、全員似たような色をしているように思える。ただ女子より男子の方がグレーに近い人が多い印象だ。  勝手に覗いておいてあれなんだけど、僕は自分勝手にも、彼らに少し失望した気がした。  ずっと見ていてもあまり面白いものでもないのでそろそろ集中を解こうとした時、逆に僕はそこからさらに目を開いてしまう羽目になった。  見つけてしまったからだった。  ただ一人、他のクラスメイトたちとは明らかに違う色を持つ彼女のことを。確か名前は、古蝶(こちょう)だったか。  僕は彼女の色に釘付けになっていた。朝のホームルーム開始のチャイムが鳴り驚きで腰を浮かすその瞬間まで。  古蝶の持つ心の内側の色は僕がこの三年間で見たことがないもので、同時にどこかで諦めていた類のものだった。  白。  たった今この地球上に誕生してきたかのような純白を持つ彼女に、色が見えなくなってからも僕はしばらく目を奪われていた。
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