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二章
その日の授業はまるで頭に入ってこなかった。右の耳から入って左の耳へと六人の教師たちの話が流れていった。その感覚は例えるなら勉強中にイヤホンに流したりする音楽に近い。集中する対象とBGM。そんな感じだ。
BGMが授業内容ならば、集中する対象は一つしかない。もちろん彼女の、古蝶のことだ。
しかし僕が今日一日あたりの学費を無駄にしてまで彼女のことを考えていたのは、思春期の甘酸っぱい恋などでは断じてない。僕は物語の主人公になんてなれない。だから決してそうじゃない。
僕が彼女を気にかけるたった一つにして最大の理由は、彼女の心の内側だった。彼女が見せた(というか僕が一方的に見たのだけど)色は美しすぎる白だった。汚れを知らないかのようなそれはそのまま嘘をついたことがないということになる。
彼女は今まで何一つとして、ほんの些細な嘘でさえもついたことがないのだろうか。ありえるわけがない。そんなこと。現代において上手い嘘のつき方は国数英理社なんかよりも学んでおくべきことだ。それに小さな嘘なんて言葉が話せないような小さな子でもつくというのに。
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