見上げれば、アケビが咲いている

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『アケビには、才能って意味の花言葉があるんだって』 と話していた、カラオケ仲間のあかりは今、体育館のステージの上にいる。他にも数人の生徒たちがステージの上に立ち、あたしを見下ろす。賞を受け取るためにステージに上った生徒。地区予選を勝ち抜き、これから本戦に挑む生徒。要は選ばれた生徒たちがステージの上にいるのだ。他の選ばれなかった生徒たちは体育館で列を作っている。 どうして……。 どうして、あかりがそこにいるんだ。声量はあたしの方が絶対に上なのに。 あかりは、SNS上でのボーカル募集に、見事受かった。こっそり応募していたらしく、ボイストレーニングをした途端、才能が開花したのだと本人は話していた。 募集している団体は結構、有名で、我が高校で褒められることとなった。 どうして……! あたしだってその募集にはエントリーしていた。歌は好きだったが、落選してからは、とてもじゃないが歌う気になれない。 あかりはこれから、歌手として、活動するのだろう。 失敗すればいい。挫折して、恥をかいて、黒歴史を刻んでしまえ。 「はあ」 小さくため息を吐く。こんなことを考えてしまう自分が嫌いだ。惨めで、歪んでいる。 再び息を吐く。先ほどとは違い、大きく呼吸をする。体育館の床を見ていたあたしは、視線をあかりたちに移す。才能を開花させた生徒たちがそこにいた。生徒たちの目は未来に向かって輝いている。きれいだ、吐き気がするほどに。 叫び出したい気分だ。見下ろしやがって。見上げれば、才能を花々のように開花させた生徒たちが視界に入る。 ムカつく。あたしは黒い服に身を包む。黒。まるで敗者のようだ。 息を大きく吸って、あたしは叫んだ。 「フレー、フレー!」 応援団長であるあたしは、両手を広げ、声を大にして、激励を送った。泣きそうになるのをこらえて、無になったかのように淡々と。
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