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「あの…鈴ちゃんの事なんですけど…」
「名取か…」
名取は春の大会以降、スランプに陥り、自身の自己ベストを更新出来ないどころか、これまで負けていなかった他の部員に負けるようになってしまっていた。
このままでは、今後出場するであろう大会に支障が出てしまう。
早く対処しないと…
「鈴ちゃん、何か悩んでるみたいなんですけど、私に何も話してくれなくて…私凄く心配で…」
おしとやかな名取とは対照的な、元気いっぱいの藤井が萎れかけの花のように落ち込んでいる…
藤井まで元気が無いと、部全体の士気の低下に繋がりかねない…
「何も言わなくても、藤井が傍に居てやるだけで名取は心強いと思うぞ。藤井の元気に名取も癒されるだろうし…」
「コーチ…」
「俺も何とかしてみるから、余り無理に聞き出そうとせずに普通に接してやってくれ」
「はい」
藤井の表情はいつもの華やかさが戻っており、ドアを開けると振り返ってピョコンとお辞儀をした。
「コーチ、相談に乗っていただいてありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ話してくれてありがとう」
「鈴ちゃんの事、余り詮索せず見守っていこうと思います。失礼しました」
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