エピローグ

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 永野がやっと声を上げると、鼻声で謝る。周りは首を横に振ると、「架は頑張った」と鼻声で古宇田が言った。 「全国、まだまだなぁ……」  永野が言うと、「俺が勝ってたら、もっと近づいてたのになぁ……」と自分を責め始める。するとそれが連鎖するように、他の奴らも自分を責め始めた。不のオーラが伝染していく。全員が自己嫌悪に陥っていく。 「皆さん、止めましょう。自分を責めるのは。皆さんよく頑張りました」  全員が自分のことを見ると、唯一涙を流していない自分は伏目を浮かべる。涙は出なかった。何というか、雪ノ下との力の差を感じただけ。今後の課題点が見つかり、全国までの遠さを知り、「悲しい」「悔しい」というよりは「次だ」という気持ちの方が強かった。  悔やんでも何も返ってこない。過去は変わらない。だったら悔やむ時間があるなら、自分は次に進むために足を動かす。 「そうです、皆よく頑張りました」  原は泣きながらそう言うと、涙を拭って心を落ち着かせるように息を整えた。 「本来なら、俺たちのインターハイはここで終わりです。他の高校だったら引退だってある。でも俺達には三年がいない。一年と二年だけのチームです。つまり俺たちは、佐田コーチが言ったみたいに、また次の大会にこのメンバーで。選抜大会を迎えることができるんです」  原が力説すると、自分は頷いた。児玉も三上も、橘も古宇田も頷いている。永野は目を潤ませながら原を見て、それから不甲斐なさそうな顔を浮かべた。 「インターハイはダメだった。でも俺達にはまだ残されたチャンスが1回あります。来年のインターハイが開催されるときは新しく一年が入ってくる。新生・霧高に代わる。でも俺たち一年と二年しかいないチームは、まだあと1回ある。それがです」  原はニカッと歯を見せて笑うと、その眩しい笑顔に自然と自分の口角も上がった。
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