第一話 レギュラー発表

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第一話 レギュラー発表

 遡ること6日前。インターハイ地区予選、シングルスが終わった翌日の5月8日。いつもならコートを立てて、部活が始まる時間より少し前に外部コーチの佐田基樹(さだもとき)がやって来て、そこからウォーミングアップが始まるのだが、今日はいつもと雰囲気が違っていた。  本来なら、佐田コーチと一緒に来ないはずのマネージャーの天野瑞季(あまのみずき)が今日だけは佐田コーチと一緒に来ていて、この時間帯には仕事で来れないはずの顧問の村上将春(むらかみまさはる)も体育館に来ていた。こじんまりとした旧体育館はコートが3面立てられていて、いつもより緊張した面構えをしている。部員たちも何かを悟ったのか、全員が張り詰めた表情を浮かべていた。 「来たか……」  隣でぼそりと永野架(ながのかける)が呟くと原が反応して「来た?」と聞き返す。天野はホワイトボードにマーカーで何やら文字を書いていくと、その姿をまじまじと見つめながら永野の話に耳を傾けた。 「だよ」 「レギュラー?」  察しが悪い原はまだきょとんとした表情をしており、何のことだか分かっていない。ホワイトボードには天野の折り目正しい文字で「D1」「D2」「S1」「S2」「S3」の文字が書かれていた。誰がどこに当てはまるかはまだ書かれていない。  D1、D2とはダブルスを、S1、S2、S3はシングルスを意味するもので、主に団体戦、つまり学校対抗で使われる。  インターハイ地区予選が終わり、インターハイ県予選があと4日後に迫っている。そろそろだと思っていたが、今日だったか。トーナメント表も既に発表されており、霧高のブロックには不動の八強、第七位のがトップに君臨していた。まるでそこだけ別世界のような隔たりが紙媒体からでも伝わってくる。
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