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淡々と進められるレギュラー発表に、名前を呼ばれていない選手は肩を震わせており、原に限っては今にも腹を下しそうな表情を浮かべていた。そっと腹に手を当て、擦っている。ゴールデンウィーク合宿と地区予選での様子と全く一緒でデジャヴを感じた。
「六人目。児玉玲」
「は、はいッ!」
児玉は驚いたように目を見開き、それから返事をすると信じられないとでも思っているのか天井を仰いでいた。頬にあるそばかすは涙のように見え、本当にうれし涙を流しているように思える。隣で原はビクビクしながら腹を擦っていると、最後の名前に耳を傾けていた。他の選手も、目をかっぴらいて聞いていた。
「最後、七人目」
佐田コーチは溜めるように空白を置くと、すーっと息を吸って流れるように選手名を溢した。
「原武臣」
原を見ると、原は目を点にしていて呆然と佐田コーチを見ていた。佐田コーチは原を見て「返事」と言うと、原が誰よりも大きな声で返事をする。永野よりも大きな声を出した原に、周りが肩を震わせた。体育館内ではエコーがずっと響いていて、しばし原のエコーだけが聞こえるという不思議な現象があった。
「以上がレギュラーメンバーだ。他3名は補欠。ただし、補欠だからといって気を抜くな」
「はいッ」
世田谷昴、周藤千早、そして笹が返事をすると区切るように佐田コーチがパンッと手を叩いた。その瞬間、一生に全員の集中が佐田コーチに向けられる。佐田コーチは真剣な表情をして、クリップボードを横に抱えると全員の顔を見た。
「レギュラーメンバーは、俺と村上、天野の3名で公正に判断した。判断基準は、普段の練習様子、ゴールデンウィーク合宿での様子、ランキング戦の結果、そして地区予選での結果だ。それらからこの7名を選んだ。選ばれたメンバーは精進するように。他メンバーもレギュラーメンバーを支え、日々精進してくれ」
「はいッ」
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