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第二話 霖海高校
「霖海高校は何と言っても貴公子が厄介だよなぁ」
部活動が終わり、部室で練習着から制服に着替えていると橘と喋っていた永野がぽつりと呟く。それを聞いていた周りは苦笑いを浮かべると頷いた。原は制服に着替え終わると、永野に近づいて口を開く。
「貴公子って誰の事ですか?」
「ん? ああ、一年は知らないか」
三上と児玉もきょとんとした表情を浮かべると、首を傾げる。自分は何となく聞いたことがあるあだ名に人物を推測しながら、話に耳を傾けた。
「綾瀬志音、霖海の主将だよ」
橘が言うと、三上と児玉はすぐに「ああ」となるものの、原だけはきょとんとした表情を未だに浮かべていた。見兼ねた世田谷が溜息を吐くと、「こいつ何にも知らねぇんだよ」と言う。
「知ってるの、浩平とか結城とか福井とかで、同い年の奴しか知らねぇんだよ。他校の年上と年下で強い奴、一切知らねぇんだよな」
「いやぁ、お恥ずかしい」
原は笑いながら照れたように言うと、世田谷が「照れるところ違うぞ」と言う。笹がくすくす笑い、周藤は首にヘッドフォンを提げながら苦笑いを浮かべていた。コンタクトを外し、眼鏡にチェンジした古宇田が制服のネクタイを締めるとこちらを振り向く。
「中学の時は、シングルス、ダブルスともにベスト16。高校になってからも同じ戦績を収めてる。合宿の時に、雪ノ下に篝翔和って奴いただろ?」
「ああ、雪ノ下の母って呼ばれてた」
原が思い出したように言うと、古宇田がこくこくと頷いてそれから顔を顰める。
「えっ、そうなの?」
「はい」
「ああ、まぁ篝さん優しそうでしたしね」
児玉が思い出しながら言うと、古宇田が「まぁ確かに雰囲気は玲に似てるか」と児玉の優しさと篝の優しさを絡める。児玉は驚いたように目を見開くと、恥ずかしそうに頬を赤らめた。三上がそれを見て「良かったな」と言う。
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