プロローグ

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***  目を覚ますと、泣いていることに気づき涙を拭う。少し冷めた涙は手の甲でひんやりと滴っていた。目覚まし時計が鳴り、それを掴んでスイッチを切るとベッドから起き上がる。大きく体を伸ばしてから首を回すと、視線の先にあるカレンダーを見た。514に赤いペンで丸がつけられたのを見て、微かに笑みが零れる。  5月14日、、団体戦の日だ。地区予選は、霧高全員が県予選出場の権利を勝ち取り、自分はシングルスで一位。ダブルスでの戦績を収めた。そう、ダブルスで二位。決勝まで進み、三上・児玉とファイナルゲーム、デュースまで持ち込んだ末敗北。悔しくて仕方がない。県予選では絶対に何が何でも、三上・児玉より良い戦績を収めてやる。  腹をポリポリと掻きながら部屋から出ると、既に起きていた父親に「おはよう」と言ってから洗面台へと行く。顔を洗って鏡を見ると、寝ぐせがしっかりついていてそれを気にせず、歯を磨き始めた。父がやって来ると、洗面台の場所を譲り、それから目が合う。 「浩平、凄い寝癖だぞ」 「わはっへる」 「何て?」 「わはっへる」 「分かってる?」  こくりと頷くと父が「寝癖は水で直るぞ」と言って、洗面台から離れた。自分は少し経ってから口を濯ぐと、父に言われた通り水で髪を濡らす。それから近くに置いてあった櫛を適当に取って梳かすと、寝癖は綺麗さっぱり無くなった。 「おう、直ったか」 「うん」  父はトースターの前で言うと、自分は後ろを通って冷蔵庫の中から乳酸菌飲料を取り出す。それを一気にぐいっと飲んで、風呂上りの牛乳や仕事帰りのビールを飲んだ時のように「ぷはー」と言った。 「おっさんかよ」 「父さんに言われたくない」
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