妖精の嘘

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妖精の嘘

「え?ほんと?」「ほんとのほんとに妖精さんいたの?」 「いたよ!すっごい可愛かったんだから!」 「えーっ、いいなあ。私も見てみたいなあっ」「ねえねえ、どんなお顔してた?どんなお洋服着てた?お空を飛んでたの?」 「え、えっと、とっても可愛らしいお顔だったわ。お洋服は薄い緑色で、背中に生えた羽でパタパタってお空を飛んでいたの」 「うわぁ、すごおい。いいなぁ」 まあるくて大きなおめめをもっと大きくまあるくさせて聞く冠愛姫(てぃあら)ちゃんに、少し詰まりながらも一生懸命お話すると、冠愛姫ちゃんはうっとりとした顔でお空を見上げていた。 「ねえまりんちゃん、妖精さんにおうち作ってあげましょうよ」 「おうち?」 「そう、妖精さんのおうち」 そう言って冠愛姫ちゃんはお砂場の砂をよいしょ、よいしょとかき集めてこんもりと盛り始めた。 ここは冠愛姫ちゃんのおうち。冠愛姫ちゃんはとっても大きなお家に住んでいて、とっても広いお庭にはお砂場もあった。 「お砂で作るの?」 「そうよ、お城がいいと思うの」 目をキラキラとして冠愛姫ちゃんは言った。 「そう、じゃあ私も手伝うわ。」あんまりにも冠愛姫ちゃんがおめめを輝かせるものだから真凛は言い出し辛くなってそういった。 2人で一生懸命こんもり持ったお砂はあまりかっこよくならなかったが、何となくお城みたいな形にはなった。 「あ、ちょっと待っててね」 そういうとトコトコと大きなお家の中に入っていって、真凛が到底買って貰えないようなピカピカしたおもちゃとかわいいお人形さんを持ってきた。 「てぃあらちゃん、それどうするの」 「これは、妖精さんのおうちの飾り付けよ」そういうとそのキラキラしたおもちゃを少しずつ砂の中に埋めていった。そしてお人形さんをお城の真ん中に置く。 「え、そんなことしたらお人形さん汚れちゃうよ」 「いいのよ、てぃあらのだし。妖精さんのお友達を作ってあげなきゃ」 砂で汚れてしまったお人形を見て真凛はとても可哀想に思った。 「もうちょっと連れてきてあげようかしら」冠愛姫ちゃんがそう言って立ち上がる。 「えっ」もうちょっとってまたお人形さん汚れちゃうのかな。それは嫌だな。かわいそうだ。 「ねえ、てぃあらちゃん」 「なあにまりんちゃん」 「あのね、妖精さんのことなんだけど……」 「妖精さんがどうかしたの?」 「妖精さんがいたってお話、実は……ウソでした!」精一杯おどけるように言ってみると冠愛姫ちゃんはまたおめめをまあるくさせてキョトンとしていた。 「え、ウソ? どうして? どうしてウソなんてつくの?」 言いながら泣き出しそうになる冠愛姫ちゃんをみて慌てて言う。 「だって今日はエイプリルフールだから」 「エープリルフール?」 「そうよ4月1日だからエイプリルフール。今日はウソをついてもいいのよ」 「ウソよ、そんなの。ウソをついていい日なんてあるわけないわ」 そう言う冠愛姫ちゃんの目からは涙が溢れていた。 「本当よ。今日の朝お兄ちゃんが言っていたもの」 「ウソよ。ウソはついてはいけないってお母様とお父様に習ったわ」 「だから今日だけは特別なの」 「そんなのウソよ!ウソ、絶対ウソだわ!」 「だってお兄ちゃんが……」 「じゃあ分かったわ、今からお兄様に聞いてみる」 そう言って手で涙を拭いながら走ってお家の中に入っていった。 あーあ。冠愛姫ちゃん怒っちゃった。嘘ついちゃったからなあ。だけど今日はエイプリルフールだもの。許して欲しいなあ。 真凛だって今朝お兄ちゃんと会った時に、お兄ちゃんが口を押さえて「真凛、兄ちゃん前歯が折れちゃった」って言うから「大丈夫? どうしよう。痛いよね? どうしよう、ピーポー呼ばなきゃダメかも」と心配してあげたらお兄ちゃんはパッと押さえていた手を離して、「うっそー、エイプルリルフールでしたー」って騙されて、初めてその存在を知ったのだ。 騙されたことは悔しかったけれど、ちょうど冠愛姫ちゃんと遊ぶ約束をしていたから、真凛もやってみたいと思っただけなのだ。 だからそんな怒らなくたっていいのにな。
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