妖精の嘘

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ちょっとして、冠愛姫ちゃんがお砂場に帰ってきた。今度は駆け足じゃなく、ゆっくりゆっくり歩きながら帰ってきた。だけど手を腰に当てて、怒っている時の格好をしている。 「お兄様に聞いてきたわ」言い方がなんだかちょっと冷たい。 「どう? 嘘ついてもいい日だって言ってたでしょ?」 「そんなの言ってなかったわ」 「え? だってまりんのお兄ちゃんは……」 「騙されたんじゃない? まりんちゃん前も言ってたじゃない、お兄ちゃんに嘘つかれたって」 「え……」 確かにそうかもしれない。真凛のお兄ちゃんはよく嘘をついて真凛をからかう。別に嘘をついてもいい日なんかじゃなくたって真凛をからかって遊んでいた。 「嘘つき」 ちょっと強めの口調で冠愛姫ちゃんが言い放った。 「え、あ……」ごめんね。そう言おうとしたけれどその言葉よりも、先に涙が出てきて言えなかった。涙がほっぺを伝ってお砂場にポタポタ落ちた。 しばらく2人ともダンマリしていたけれどそのうち冠愛姫ちゃんは、お砂場の道具をおかたづけして、お家の中に帰っていった。 目が涙でいっぱいで前は見えなかったけれど、きっとプンプン怒っていたんだろうな。 もう冠愛姫ちゃんは今日はお砂場に帰ってこないと思って、真凛も冠愛姫ちゃんのお家から帰ることにした。 ポツポツと涙の川を作りながら自分のお家まで帰った。そのキョリはいつもより遠いみたいに感じた。 お家に帰ると、まだ泣いている真凛を見てお兄ちゃんが「どうした?」って真凛に聞いたけれど、真凛は返事をしなかった。 晩御飯を食べた後、お母さんとお風呂に入って、髪の毛をゴシゴシ洗ってもらっている時に、まだ目が赤くなってた真凛にお母さんも「どうしたの?」って聞いた。 「なんでもない」って答えたけれど、またちょっと涙が出た。そしたら優しく頭を撫でてくれたから、もっと涙がいっぱいになった。 明日幼稚園でちゃんと謝ろうって思った。
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