ウソツキの代償

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「はい、お前の」  全員が書き終え、各自のアルバムが返却された。席に座りサンキュ、と受け取ってフリーページを開く。カラフルな色で彩られたメッセージたちは、大体が『これからも頑張れ』というような内容だった。 「あれ」  ピンクのペンで右肩上がりに書かれた文字を見て、俺は眉をひそめた。メッセージの下にサインはなく、誰からかは分からなかったが、読んで顔を上げた。 『大嫌いなんて嘘』  教室内の冷めやらぬざわめきの中、このメッセージを書いたであろう人物を目で探すと、そいつもこちらを見ていたようでバッチリと目が合った。一瞬にして二人だけしかいないような感覚に陥る。卒業式仕様にアップにアレンジした髪の彼女は、意地悪そうに笑ってゆっくり口を動かした。 『わ た し も す き』 「嘘だっ!」  俺は思わず立ち上がった。ガタン、椅子が倒れるとともに周りの生徒たちが驚いて静かになる。俺は構わず小園の前に行き、手を掴んで教室を出た。 「おー! 青春だーっ!」  教室から歓声が上がる。廊下側の窓が開け放たれ、俺と小園はクラスのみんなに見送られた。  ズンズン廊下を進む。あちこちに卒業生と思わしき他のクラスの奴らがいて、二人になれるところが見つからない。ようやく見つけたのは、校舎と体育館を繋ぐ渡り廊下だった。小園と向き合う。 「なんで大嫌いなんて嘘ついたんだ」  そう訊くと小園は自分の両腕を組んで仁王立ちになった。 「今まで散々嘘ついてきたあんたに言われたくない」  ド正論を浴びせられ、俺は言葉に詰まる。確かにそうだ。シュン、とうなだれると小園は小さく笑った。 「嘘つかれてた分、嘘で返したくなって大嫌いって言った。ごめんね」 「小園……」 「どう? 嘘つかれた気分は」 「……最悪でした。もう嘘はつきません」 「よろしい」  腕を解いた小園は、少し背伸びをして俺の頭を撫でた。 end.
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