1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
中学三年生の三月。卒業まであと一週間を切った頃。
「俺、小園に告白する」
友だちにそう宣言すると、驚かれた。
「マジ? 今まで散々からかってきたのにどうした」
「だって高校別なんだぜ? 言わないと後悔しそうだから」
小園は頭が良かったので、私大付属高校に進学予定だった。俺は家から近い普通の公立高校。小学生の頃から好きだった小園ともう少しで会えなくなると思うと、居てもたってもいられなくなったのだ。
「なぁ、小園は俺のこと好きかな」
「それ本気で聞いてる? お前のために言っておくけど、多分嫌いだと思うよ」
友人の辛辣な言葉に頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。嘘だろ。
「なんでそんなこと分かるんだよ」
「散々嘘ついてきた奴のことなんて、俺なら好きにならないね」
「小園は分かんねぇだろ」
「そうだな。ま、当たって砕けろだ」
砕ける前提なのが悲しい。別に小園も俺のことを好きなんじゃないかと自惚れているわけではないが、少なくとも嫌われてはいないと思っていた。
「小園、ちょっと」
放課後、帰り支度を始めた小園に声を掛けた。首を傾げる小園をかわいいと思いながら、人気のない一階昇降口へ誘導する。
「どうしたの? 内緒話?」
小学生の頃はウサギが付いた髪ゴムで結っていたが、今は飾りの付いていない普通の黒いゴムで、サイドに流している。小学校の頃から変わらない俺に対して随分と大人びた小園に、今更ながら動悸がした。
気持ちを伝えたいと息巻いていたのに、いざ本人を目の前にすると言葉が出てこない。
「あの、さ……えっと……」
呼び出しておいてしどろもどろになる俺を、小園は不信感を抱いた目で見た。
「なに、用がないならもういい?」
踵を返して立ち去ろうとする。待って、行かないで。
最初のコメントを投稿しよう!