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「好きだっ!」
本当は今までついてきた嘘のことを謝って、それから告白するつもりだった。頭の中で繰り返したシミュレーションは小園が背中を向けた時点で無意味なものになった。立ち止まった小園はゆっくりと俺を振り返る。その顔を見た瞬間、俺の背中に冷や汗が伝った。
「小園……」
「卒業間近でも嘘つくんだね」
「え」
今まで小園に対して嘘をつきすぎて、この告白さえも嘘だと思われたようだった。俺は必死に否定する。
「違う、小園、聞いてくれ。これは嘘なんかじゃない」
「『スイカの種飲み込んだらお腹の中で育つ』っていうのも嘘じゃないって言ってた」
「それは考えたらわかるだろ」
「うん。だから、その告白も考えた結果、嘘っていう結論になった」
「違うってこれはマジなんだって……」
自分で自分を恨んだ。完全にオオカミ少年だ。どうしたら信じてもらえる? 一生懸命頭を働かせるが、何を言っても「嘘だ」と一蹴されそうだった。
小園は頭を抱えた俺を一瞥して、フンと鼻を鳴らした。
「それが本当だとしても、今まで散々わたしに嘘ついてきたくせに、よくそんなことが言えたよね」
「え……」
そして言い放たれた言葉に、俺は絶句した。
「わたしはあんたのこと、大っ嫌い」
冷ややかな視線を向け、小園は俺の前から姿を消した。
『お前のために言っておくけど、多分嫌いだと思うよ』
友人が言っていたことは、ある意味外れていた。だって、嫌いより上だったから。
大っ嫌い。
俺はしばらくその場から動けなかった。
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