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「うんめえー」
坂池が絶叫した。
「ちょっと、ボリューム」
芳雄は口に人差し指を持ってきて、必死に抑えるよう言った。
悪りい悪りい、と坂池は、どて煮を口へ運んだ。
「でもまたなんで奢ってくれるなんて?」
「ったく。今日はなんの日だ?」
「今日は・・・・・・」
出てこない。
最近はもっぱら仕事しかしていなかった。
帰りも遅く、テレビもニュース以外見られていない。
曜日や日にちの感覚は全くなかった。
「ボーナスだよ、ぼぅなす」
坂池は人差し指と親指で、マルを作って見せた。
ああ、とあっさりとした反応しかしなかった。
「何だよ。もっと喜べよ。仕事以外に何か楽しみ見つけないと、本当にくたばっちまうぞ、あちっ」
坂池は厚焼き玉子をはふはふ言わせて食べている。
楽しみか。
その場でじっと考え込んだ。
「おい、おーい、よしお!何ぼけーっとしてんだ。行くぞ」
気づくとテーブルの上の料理は無くなっており、坂池もコートを着ていた。
「あ、はい」
芳雄も慌ててテーブルの上のスマートフォンと財布を鞄にしまった。
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