消滅

5/13
前へ
/13ページ
次へ
「え?俺?」 不意に呼び止められて、芳雄は戸惑った。 「はい。お話があります。12時過ぎに屋上に来ていただけますか?」 フラグ。 否、これはもうすでに。 芳雄の胸は高鳴った。 仕事中とはいえ女性から声を掛けられ、しかも休憩時間に呼び出し。 待ち遠しい時間ほど、到来が遅く感じた。 11:40。 少し早いが屋上で待機して、心の準備をすることにした。 屋上に到着すると、息を切らしていることに気づいた。 どのような言葉で、どういうタイミングで、どういう雰囲気で言われるのか。 勝手な妄想のみが膨らんだ。 妄想が膨らみすぎて破裂したのか、現実に引き戻された。 「あのー」 目の前にはすでに、お目当ての人物、飯田が立っていた。 芳雄は驚きすぎて、危うく派手に尻もちをつくところだった。 「いつから?」 「1分ほど前から・・・・・・」 もじもじとしながら飯田が答えた。 今からのことを考えると、このもじもじすら愛おしく思えてきた。 「で、話って何?」 内心、白々しさを感じていたため、なんだか笑いが込み上げてきそうになった。 「あ、あの、私」 さあ、来い。 俺のことが好きだと言え。 「稲垣さんのことが、す・・・・・・」 早く言え。 好きだと。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加