1人が本棚に入れています
本棚に追加
「え?俺?」
不意に呼び止められて、芳雄は戸惑った。
「はい。お話があります。12時過ぎに屋上に来ていただけますか?」
フラグ。
否、これはもうすでに。
芳雄の胸は高鳴った。
仕事中とはいえ女性から声を掛けられ、しかも休憩時間に呼び出し。
待ち遠しい時間ほど、到来が遅く感じた。
11:40。
少し早いが屋上で待機して、心の準備をすることにした。
屋上に到着すると、息を切らしていることに気づいた。
どのような言葉で、どういうタイミングで、どういう雰囲気で言われるのか。
勝手な妄想のみが膨らんだ。
妄想が膨らみすぎて破裂したのか、現実に引き戻された。
「あのー」
目の前にはすでに、お目当ての人物、飯田が立っていた。
芳雄は驚きすぎて、危うく派手に尻もちをつくところだった。
「いつから?」
「1分ほど前から・・・・・・」
もじもじとしながら飯田が答えた。
今からのことを考えると、このもじもじすら愛おしく思えてきた。
「で、話って何?」
内心、白々しさを感じていたため、なんだか笑いが込み上げてきそうになった。
「あ、あの、私」
さあ、来い。
俺のことが好きだと言え。
「稲垣さんのことが、す・・・・・・」
早く言え。
好きだと。
最初のコメントを投稿しよう!