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蜂蜜色に輝く金髪に、くっきりと彫りの深い顔立ち、紺碧の瞳。王子やその取り巻きに劣らぬほど背はすらりと高く、いつも首まで襟のあるドレスを身に着けています。肌や胸を露出することのないデザインですが、それはジャスティーン様の魅力を損なうことはなく、むしろ清楚に引き立てていてよく似合っており、いまや王都の流行を牽引しているほど。
髪も凝った形に結い上げるどころか、後頭部で軽く一房束ねてあとは肩に流しており、動きにそって光を放つかのように煌いています。
「おはようございます」
並んで座っただけで、あちこちから視線を感じる。もちろん、私へのものではなく。ジャスティーン様見納めの時期が近づいていることに焦燥を覚えた令嬢たちが、熱い視線を注いでいるのです。
もうおわかりですね。
鬼モテです。主に女性から。
そのジャスティーン様と仲良くなったのは、ほんの些細なきっかけ。
今を遡ること、三年前。
体を鍛えるのが趣味というジャスティーン様は、学院でのカリキュラムや自由時間だけでは足りないそうで、夜に女子寮をこっそりと出ては走り込みや滝行をなさっているとのこと。その帰りに、二階にあるご自身の部屋に戻る為、木を上っているところにばったり出会ってしまったのです。
――そこで何をしているんですか!?
月明かりの中に見えたそのシルエットはシャツにズボンにブーツで、まるで青年そのもの。てっきり女子寮に忍んできたどなたかの逢引き相手かと勘違いしてしまったのでした。
誤解はすぐにとけましたが、「君こそ何をしていたの?」と聞かれた私は寮の裏庭の片隅で子猫を飼っていることを打ち明けることになりました。その数日前、親とはぐれたらしい子猫を見つけたのですが、部屋の中で飼う許可が下りずにやむなく隠れて餌を運んでいたのです。
――ふふっ。面白い子だね。
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