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木の根元に腰を下ろしたジャスティーン様は、乗馬スタイルでジャケットにズボンにブーツ。そのジャケットをさっと脱いで、惜しげもなく草地に置いて私に座るように促してきました。
「君のドレスが汚れる。遠慮しないで」
「まさか、ジャスティーン様。そこはジャスティーン様がお座りください」
私が困って言うと、考え込んだジャスティーン様はいきなり私の手を引っ張って座らせ、背後から抱きかかえるようにして腰を下ろしました。
「くっつけば二人座れる。だめ?」
耳元で囁かれて、私は顔が赤くなるのを自覚しながら「だめじゃないですけど……」とうわずった声で答えてしまいました。体はがちがちに固まっています。
(あちこちぶつかっているし、緊張します!!)
普段から身長差は感じていたけれど、視界に入る手、無造作に広げられた足など、サイズ感が違う。すらっとして見えていたけど、シャツ越しに見える腕は骨太そうでよく鍛えているのが伝わってきます。
右手には、ガラスの小瓶。
「この液体が本当に惚れ薬という証拠はどこにもない。もし中身が毒だったら、君は王太子暗殺に手を染めることになる」
耳のごく近くで囁かれて、その言葉を理解した私はさーっと青ざめたと思います。血の気がひくのが自分でもわかりました。
「それはそうですね。体よく利用されていて、騙されているだけかも……! ああ、もともと使う気はなかったんですけど、良かった。というか、そんな初歩的なこともっと早く自分で思いついていれば良かったです。処分してから、母にはそう言っておきます。よくわからないものを、他人の口に入れることなどできないと」
誰かの差し金で、母が騙されて王子暗殺に加担させられている線も無くはない。
「君の母上は、どうしてそこまで思いつめてしまったの?」
背後から穏やかな声で尋ねられて、私は溜息をついて答えました。
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