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「思いつめたといいますか、『悪役令嬢物語』を読み過ぎたんだと思います。王子は婚約破棄をするものだと決めつけているみたいですけど、その後ですよ……。そんな軽はずみに婚約破棄をする王子と結ばれても幸せにはなりませんし。ましてや、私べつにアーノルド様のことは……」
「あいつのことが好きじゃなくても、王妃の座は魅力的じゃない?」
ぎりぎり、触れ合わないように体を精一杯小さくしていても、背後でジャスティーン様が声を立てて笑うと振動のようなものが伝わってきて、緊張します!
(ジャスティーン様にドキドキしている場合じゃないんだけど……!!)
この方婚約者のいる、女性ですし。
「王妃の座……にふさわしいものを、私は何一つ持ち合わせてないので。国を傾けてしまうかも。そんなの荷が重くて」
「そう? レベッカなら結構うまくやれるんじゃないかと思うけど」
「まさか。ジャスティーン様以上に適任はいません。全国民納得だと思います」
「レベッカは?」
体を傾けて、後ろから顔を覗き込まれた。目が合うと、にっこりと笑いかけられる。
(し……至高……! うつくしすぎるこの笑顔!)
こんな近くで見られるのもあと少しですねと噛みしめつつ、私はジャスティーン様の目を見つめた。
「私ももちろん、納得です。ただ、本音を言えば、アーノルド様がうらやましいです。ジャスティーン様と結婚できるなんて。役得だと思います」
視線を絡めたまま、ジャスティーン様はふっと、甘く微笑みました。
「そこまで言ってもらえると照れるね。やっぱり、アーノルドとは婚約破棄しようかな」
「いまの話で、なぜそういう流れに」
「なぜって。私もべつにアーノルドのことを特別好きなわけじゃないからね。結婚の自由があるなら好きな相手と結婚したいというだけの話だ。たとえば私のことをこんな風に思ってくれるレベッカと」
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