嘘と惚れ薬と婚約破棄

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 くすくすと笑いながら私の手をとり、手の甲に唇を押し付けました。  ぞくっ。  すばやく辺りを見回して、誰も見ていないか確認してしまった。 (殺される。さすがにこれはファンの皆様に見られたら命とられる)  私の焦りなどどこを吹く風、ジャスティーン様は立ち上がると、私の正面に回り込んで片膝をつき、まっすぐに見つめてきました。  手にしていたガラスの小瓶を私の目の前で静止させて、ひとこと。 「飲んで良い?」 「なんでですか!? 毒かもしれないって自分で言っていたのに、だめに決まってます!!」  慌ててそのガラスの小瓶を奪い取ろうとしたのに、ひょいっと逃げられてしまう。 「惚れ薬ってどういう効果なんだろう。本当はレベッカに飲ませてみたいんだけど、毒だったら困るから。飲むなら私が」 「処分しましょう!」  提案しているのに、蓋を開けるとジャスティーン様はあっという間に唇を寄せて瓶を傾けて、中身を飲んでしまいました。 「あーっ……!!」  悲鳴を上げる私の前で、ジャスティーン様は顔色を変えることなく「ふぅん」などと言っています。 「平気ですか……? こう……何か痛かったり苦しかったり」  恐る恐る声をかけると、「うっ」と言いながらジャスティーン様は胸をおさえて俯いてしまいました。綺麗な蜂蜜色の髪がさらりと肩をすべります。 「ジャスティーン様あああああ、死なないでくださいいいいいいい」  両肩に両手で掴みかかると、ジャスティーン様は顔を上げてどことなく辛そうな笑みを浮かべて言いました。 「レベッカ、好きだ。レベッカのことが好き過ぎて胸が苦しい」 「惚れ薬効いた!!? 本物だったんですか!!?」  思わず素で「私もです」と言いそうになったが、そんな場合ではない。これはただ薬の作用、気の迷いですらない。いわば、言わされているだけの状態。 (解毒しないと)
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