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ジャスティーン様をこの状態にはしておけない。
そう思ったところで、ジャスティーン様はにこっと笑いました。
「……なんてね?」
「うそですか……」
「嘘じゃない方が良かった?」
青い瞳に光を湛えて、低めた声で囁かれて、私はほーっと息を吐く。
「ドキドキしました」
「そう。嬉しいな。嘘じゃないから」
ジャスティーン様はくすくす笑いながら、私の顔をじっと見つめて、一言。
「好きだよ、レベッカ」
私もです、って言いたいけど。
このひと、王太子と結婚する方ですからね。さすがにそういうわけにはいきません。
* * *
「ジャスティーン、今日この日をもって、君とは婚約破棄をする」
なのになのになぜか始まってしまいました、婚約破棄イベント!
卒業パーティーの会場で、アーノルド様が宣言。
(取り巻き! 早く止めてください! このままだと王子御乱心で国王陛下が乗り出してきて廃嫡だなんだの大騒ぎに……!!)
と思っているのに、なぜか誰も止めない。
今日も今日とて肌を露出しないドレスを身に着けたジャスティーン様は、腰に手をあて、片手で扇を開いてにこにこと笑って聞いている始末。ええええ。
しかも、けろっとした調子で言い出しました。
「待ってたよこの日を。せいせいする。婚約破棄、気持ち良い」
ええええええ。
(どうしよう……、この二人の会話がわからない)
ジャスティーン様のお友達的ポジションですぐそばにいた私に、アーノルド様がふと視線を向けてきました。
「さてそれでものは相談なんだが。俺は以前からそちらの御令嬢を憎からず思っていた……、というか、正直に言えば好みです。レベッカ、俺と付き合っては頂けないだろうか」
好青年だけど特に恋心を抱いたことはないアーノルド様からの、まさかの告白。
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