中学2年・春

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中学2年・春

春休みが終わり、私は2年生になった。晴田と離れるのではないかと思って心配したが、晴田とはまた同じクラスになれた。 晴田とは時々遊びにいったり勉強したりもして、他の女子と比べたら晴田と仲が良くなったと思う。けれど私は晴田に告白はしていなかった。勇気がなかったし、今の関係が壊れるのが怖かった。 「みんな、今から転校生を紹介する。」 そう言って2年生になった初日に新しい先生の隣には色素の薄い長い髪をおろした女の子が立っていた。背が高くすらりと伸びた細い手足が一輪の切り花のようだった。 先生は黒板に瀬川(せがわ)ゆりと名前を書いた。ゆりちゃんは去年までイギリスに住んでいたらしいが父親の仕事の関係で日本に帰ってきたらしい。 「5歳までは日本にいましたが、慣れないこともあると思います。早くみんなと仲良くなりたいので、よろしくお願いします。」 女子にしては高すぎず優しくて聞き取りやすい声だった。 転校生という真新しさもあるだろうが、ゆりちゃんの存在感にクラス中が見惚れていた。 私はふと、斜め前にいる晴田の顔を見る。晴田もみんなと同じようにゆりちゃんを見ていた。 だけどその視線は試合のときに灯る熱と似ている気がした。 桜が散り始めた頃、私のなかに何かざわざわとしたものが燻っていた。
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