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「次は、終点のG駅です。お降りの際、お手荷物をお忘れなき様、お願いいたします」
バスが駅に着いた。
俺は息を吐いて両頬を軽く叩いて意識を回想から現実に戻し、バスを降りた。
地元の駅に行くにはここから更に電車に乗り換える必要がある。
俺は、電車に乗り込み外を見た。
車内から見る風景は、以前は寂れていたのに、まるで都会に近づけとばかりに田んぼが建設中のマンションに変わっていた。
30分ほど電車にゆられると実家の最寄駅に着いた。
タクシーを拾い総合病院へ。
またあの人と会う。
自分の心臓がうるさいくらいドキドキしていた。
病院に着いた俺は受付で名前を伝えると入院病棟へ向かった。そしてようやく「巽」のプレートがある部屋の前までたどり着いた。
俺は、深呼吸してドアを開ける。
「……晴ちゃん」
すぐさま美人がこちらをみて立ち上がった。
一方病人は眠っている様だった。
「おっす」
俺はどうしたらいいのか正解が分からなくて手を挙げる。
中学卒業以来に会う姉ちゃんは、俺からみても綺麗になっていた。
「姉ちゃん。母さんの具合はどう?」
その人に近づき、顔を覗き込む。
前よりシワは増え、髪には艶がなかった。
「それがね、その……東京から来てもらったんだけど、もう大丈夫だって」
「んだよ」
脱力。
膝の力が抜け、しゃがみ込む。
「晴ちゃん。その口調……」
姉ちゃんが何かを言いかけた時だった。
「晴」
入り口のドアに父さんが立っていた。
50才にもなると白髪が目立ってくるな、と何処か他人事に思う。
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