イ ツ ワ リ

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「……来てくれたんだな」  何かが込み上げる様に父さんは言った。  俺は、そんな父さんが嫌いだと思った。 「ありがとう、母さんに会いに来てくれて」 「うるせぇ。てめえの為じゃねえよ」 「晴」  困った様に父さんは言った。その態度に更に腹が立つ。 「やめて。隣の部屋に響いちゃう」  俺はその正論を飲み込むと、ベット脇の空いている椅子に座った。  父さんは、部屋の隅の丸椅子に腰掛ける。その動作一つで、人が歳をとるとはこう言うことかとまじまじと思った。 「……どうだ、大学の方は。朝香から少し聞いたよ。恋人がいるんだってな」 「だからなんだよ」  睨みつけると父さんは慌てふためいた。 「い、いや。父さんは賛成するぞ。ただ問題は母さんだ」  父さんの目が泳ぐ。 「お前に彼氏が出来たと母さんが知ったらどうなるか」 「……貴晴?」  囁くほど小さな声が聞こえた。  俺たち3人は声の主を見た。  母さんが薄目を開け、こちらを見ていた。
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