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俺──私、巽晴香は巽貴晴の双子の妹として産まれた。私達は一卵性双生児で、鏡に写したようにそっくりだった。
貴晴は待望の長男とあって母はたいそう喜んだ。
これで、巽家の跡取りができた、と。
馬鹿馬鹿しいが、私の育った田舎は、そういう所だった。
長女の朝香、次女の晴香は二の次で、母は貴晴ばかりを溺愛した。
私は顔のそっくりな貴晴ばかり贔屓にされてとても羨ましかった。
私たちが小学校3年生の時、貴晴は飲酒運転の車にはねられて亡くなった。
あの時の母と祖母の嘆きようと言ったら。
祖母は母に呪いをかけた。
追い詰められた母はノイローゼの様なものになった。
その一年後、祖母は亡くなった。脳梗塞だった。
そこで母にかけられた呪いが消えるはずだった。
けれど、母は呪いを受け入れてしまっていた。
私の事を「貴晴」と呼ぶようになった。
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