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祖母からの呪いは嫁である母へ。母からの呪いは私へと伝わった。
「私」ではなく「俺」と言いなさい。貴晴と同じように。
髪を切りなさい。
ズボンを穿きなさい。
人形は捨てなさい。
巽家に相応しい人間になりなさい。
貴方は跡取りの長男なのだから。
そう言って母は私が女である全てを否定した。
「私」と言おうものなら母は錯乱し、泣き喚いた。
父は、見て見ぬ振りをした。世間体で入院させたくなかったらしい。
「私」が「俺」と言っている時は、母は正気を保てた。
「巽晴香」は消えるけれど、「巽貴晴」の愛情を貰えるんだ。
最初に思ったのは、歪んだ愛でも欲しいと言う気持ちだった。
けれど、自分に嘘をついた結果。
私は徐々に心を病んでいった。
本当の私は「俺」なのか「私」なのか分からなくなってきたのだ。
そして中学の時、私のことを男の子だと思っていた女の子から嘘つき呼ばわりされた。
私はグレ、暴れ、家の壁に穴を開けたのは一度や二度ではなかった。
でも、姉ちゃんだけが味方だった。
そんな時に父さんが全寮制の高校への進学を勧めた。
母さんから逃げられる。
そう思った。
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