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「貴晴、貴方は巽家の跡取りなんだからね」
そんな風に母さんが言い出したのはいつぐらいの時だっただろうか。
婆ちゃんが死んだ時? それとも、あの事故の時だろうか。
とにかくその小3、小4ぐらいの時の記憶が曖昧で。
そんな俺を姉ちゃんはいつも庇ってくれた。
「やめて! 晴ちゃんにそんな事言わないで」
けれど母さんは止めない。さも巽家が特別であるかのように毎日言う。
「朝香。貴女はまだ中学生でわからないかもしれないけどね、巽家は代々続く由緒ある家なの。貴晴がちゃんとしていないと、ご近所様から末代まで陰口を叩かれるのよ」
「そんなの、死んだお婆ちゃんの呪いみたいじゃない。目を覚まして! お婆ちゃんはもう死んだんだよ? だからもう、こんなことやめてよ」
姉ちゃんは泣いていた。俺のために。
どうしたらいいのか分からなかった俺は、ただ2人を見ているしかなかった。
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