イ ツ ワ リ

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「今更なんなんだよ!? 『悪かった』だと? そんなんじゃなぁ、警察(サツ)は要らねぇんだよ」 「晴」  父さんが悲しそうにした時だった。 「ただいまー」  緊迫した空気の中、頭に花が咲いた様な声が響いた。 「どうしたの2人とも。怖い顔して」 「いや、その」  しどろもどろになった父さんを横目に俺は宣言した。 「俺、高校は全寮制の所にしようと思う」  父さんは俯き、母さんはポカンと口を開けた。そして数秒後、目は吊り上がり、今にもツノが生えてきそうな般若の顔になった。 「全寮制の学校? 家から遠いじゃない。何かあったらすぐに駆けつけられないのよ? そんなのダメよ」  唾を飛ばす勢いで言う母さんに、父さんはそっと肩を抱いた。 「可愛い子には旅をさせろって言うじゃないか。それにほら……箔が付いて近所の皆んなも母さんを一目置くぞ」  母さんはいつも近所の目が気になる人だった。  父さんの説得のかいあって2週間後、母さんは渋々寮生活を許可した。
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