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繋いだ手を離さずに俺たちは電車を降りた。
流石東京。俺たちの事を見向きもしない。
田舎じゃあ、手を繋いでいるカップルがいただけですぐ噂になる。
田舎の噂の広まるスピードは、インターネットよりも速いのに。
ここではそんな事、気にしなくていいんだと思った。
その日、俺たちは渋谷で洋服を買い、イタリアンを食べた。新居に着いたのは夜の11時を過ぎた頃だった。
康二は心配だからと家まで送ると軽いキスをして俺たちは別れた。
それから俺たちの大学生生活が始まった。
俺は中性的な顔もあってか女子にすごいモテた。
だけど、彼女なんて欲しいわけもなく。
俺と康二はいつしか半同棲をするようになった。
それからは、怖いほど穏やかな日々が続いていた。
そんな大学3年の秋。
夢の浅瀬を泳いでいると、遠くでスマホが鳴っている音が聞こえた。
寝ぼけまなこで電話に出る。
「はいはい」
「あ、晴ちゃん」
それは、震えた姉ちゃんの声だった。
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